登録販売者試験#73 痛みに関する漢方②
1.鎮痛目的で使う「漢方」とは?解熱鎮痛薬との違い。鎮痛に関わる漢方続きと、まとめ
ドラッグストアには、ロキソニン・イブプロフェン・アセトアミノフェンなどの「解熱鎮痛薬(げねつちんつうやく)」と並んで、
「頭痛に」「月経痛に」「関節痛に」 と書かれた 漢方薬 も多く販売されています。
登録販売者試験では、
- どういう体質・症状の人に、どの漢方が合うのか
- 使ってはいけない体質や、注意点
を理解していることがとても大切です。
【過去の記事】解熱鎮痛剤
1.当帰四逆加呉茱萸生姜湯(とうきしぎゃくかごしゅゆしょうきょうとう)
効能効果
体力中等度以下で、手足の冷えを感じ、下肢の冷えが強く、下肢又は下腹部が痛くなりやすいものの次の諸症:冷え症、しもやけ、頭痛、下腹部痛、腰痛、下痢、月経痛(クラシエ当帰四逆加呉茱萸生姜湯)
▼適する症状
- 体力中等度以下で 四肢の冷えが強い人
- 特に 下肢の冷え・下腹部痛 を伴うタイプ
- しもやけ、頭痛、下腹部痛、腰痛、下痢、月経痛など
▼使用時の注意点
- 胃腸が弱い人には不向き
- 構成生薬に カンゾウ(甘草) を含む
2.疎経活血湯(そけいかっけつとう)
効能効果
体力中等度で、痛みがあり、ときにしびれがあるものの次の諸症:関節痛、神経痛、腰痛、筋肉痛(クラシエ疎経活血湯)
▼適する症状
- 体力中等度
- 痛み・ときに腫れを伴う
- 関節痛・神経痛・腰痛・筋肉痛 に用いる
▼使用時の注意点
- 消化器症状(食欲不振・胃部不快感)が出やすい
- 胃腸が弱く下痢しやすい人には不向き
- カンゾウ(甘草)を含む
3.釣藤散(ちょうとうさん)
効能効果
体力中等度で、慢性に経過する頭痛、めまい、肩こりなどがあるものの次の諸症:慢性頭痛、神経症、高血圧の傾向のあるもの(ツムラ釣藤散)
▼適する症状
- 体力中等度
- 慢性の 頭痛・めまい・肩こり
- 高血圧傾向 の人にみられる慢性頭痛
▼使用時の注意点
- 消化器の副作用(食欲不振・胃部不快感)が出ることがある
- 胃腸虚弱で冷え症の人には不向き
- カンゾウ(甘草)を含む
4.呉茱萸湯(ごしゅゆとう)
効能効果
体力中等度以下で、手足が冷えて肩がこり、ときにみぞおちが膨満するものの次の諸症:頭痛、頭痛に伴うはきけ・嘔吐、しゃっくり(クラシエ呉茱萸湯)
▼適する症状
- 体力中等度以下
- 手足が冷えて肩がこる
- みぞおちのつかえをともなう 慢性頭痛
- 吐き気・嘔吐・しゃっくりを伴う頭痛
5.解熱鎮痛薬の相互作用
- アルコールは 胃粘膜を荒れやすくする ため併用注意
- アセトアミノフェン:アルコールで 肝機能障害のリスク増加
- NSAIDs:胃腸障害が増強されやすい
「痛み止めと熱さましは影響し合わない」という認識は誤り。
成分が重複することがあり、販売時・服用時に注意が必要。
6.鎮痛全般の総括
受診勧奨(重要)
解熱鎮痛薬は、発熱や痛みを一時的に抑える「対症療法」にすぎません。
次のような症状を伴う場合は、重大な疾患が隠れている可能性 があるため、自己判断で薬を続けるのではなく、医療機関の受診が必要です。
受診を考えるべき症状
- 激しい腹痛や下痢 などの消化器症状
- 息苦しさ などの呼吸器症状
- 排尿時の不快感 などの泌尿器症状
- 発疹・かゆみ などの皮膚症状
- 発熱が 1 週間以上 続くとき
→ 重い病気が背景にあることも
解熱鎮痛薬を使い続けることで、症状の原因が隠れてしまい、診断が遅れる危険 があります。
また、解熱鎮痛薬が効かないからと量を増やしたり長期間飲み続けたりするのは、病態を悪化させる可能性があります。
■関節痛のときの注意
以下の症状がある場合は、迷わず受診が必要です。
- 膝が赤く腫れて強い痛みがある
→ 化膿性関節炎の可能性 - 関節の変形が疑われる
→ 慢性関節リウマチの可能性
■月経痛が強い
- 毎月の月経痛が だんだんひどくなってきている
- 仕事や日常生活に支障が出るほど強い痛み
このような場合は、子宮内膜症 などの病気が隠れていることもあり、
解熱鎮痛薬や漢方だけで対処せず、婦人科受診をすすめるべきケースです。
解熱鎮痛薬と頭痛
- 頭痛が軽いうちの服用は有効。
- しかし、症状が出る前に予防的に飲むのは不適切。
- 頭痛が頻繁に起こったり、薬を飲んでも 痛みが続く場合 は、すでに自己治療の範囲を超えている。
▼薬の使いすぎによるリスク
- 薬の連用で 頭痛が慢性化(薬物乱用頭痛:Medication Overuse Headache) することがある。
- 薬をやめると頭痛が再発し、さらに薬が手放せなくなる悪循環に。
- この状態が続くと 薬物依存の可能性 も考えられる。
【参考資料】

