登録販売者試験 #28胃腸薬❷
【第2回】制酸薬の配合成分と注意点―炭酸水素ナトリウム、アルミニウム、マグネシウム、カルシウムの違いとは?
胃薬の「制酸成分」とは?
制酸成分は、胃酸を中和したり、胃の粘膜を守ったりする作用を持つ成分のことです。
胃酸は本来とても強い酸で、
ストレスや食べすぎ、生活リズムの乱れで胃酸が増えると
- 胸やけ
- 胃もたれ
- 胃痛
- ムカムカ
などの症状が起こりやすくなります。
そのようなときに、制酸成分が胃酸をやさしく抑え、不快感を和らげてくれます。
1. 医薬部外品の胃の薬とその制限
まず大前提として、医薬部外品の胃薬は、人体への作用が緩和されており、配合できる成分やその上限量が定められています。そのため、効能・効果の範囲も限られます。
制酸薬に含まれる成分は、胃酸を中和して症状を抑える「中和反応」によって作用します。以下は主な成分分類とそれぞれの特徴です。
2.制酸成分の種類と特徴(成分ごとの注意点)
胃薬に使われる制酸成分は、大きく ①アルカリ系 ②アルミニウム系 ③マグネシウム系 ④カルシウム系 に分けられます。
成分ごとに特徴や相性、注意が異なるため、選ぶ際のポイントとして押さえておくと役立ちます。
2-1.アルカリ成分(重曹など)
● 主な成分
- 炭酸水素ナトリウム(重曹)
● 特徴
- 胃酸を速やかに中和し、胸やけ・胃痛を改善する
- 古くから使われているシンプルな制酸成分
● 注意点
- 中和反応で 炭酸ガスが発生するため、腹部膨満感(お腹の張り)が出やすい
- 胃が張りやすい方、げっぷが多い方には不向き
2-2.アルミニウム成分(胃粘膜保護にも役立つ)
● 主な成分
- 乾燥水酸化アルミニウムゲル
- ジヒドロキシアルミニウムモノアセテート など
● 特徴
- 胃酸を中和すると同時に 粘膜保護作用 もある
- 刺激が少なく、弱った胃にも向く
- 下痢気味の人と相性が良い(便を固めやすい性質)
● 注意点
- 透析療法中の方:
アルミニウムが体内に蓄積し- アルミニウム脳症
- アルミニウム骨症
のリスクがあるため 使用を避ける or 医師へ相談が必須
- 透析を受けていない人でも、長期連用は避ける
2-3.マグネシウム成分(便を柔らかくする傾向)
● 主な成分
- ケイ酸マグネシウム
- 酸化マグネシウム
- 炭酸マグネシウム など
● 特徴
- 胃酸を中和し、胸やけを改善
- マグネシウムは腸管への水分移動を促すため、
便をやわらかくする(軽い下剤作用) がある - 便秘気味の人と相性が良い
● 注意点
- 下痢をしている人には不向き(症状悪化の可能性)
- 腎機能が低下している人は、マグネシウム蓄積のリスクがあり注意が必要
2-4.カルシウム成分(強めの制酸作用)
● 主な成分
- 沈降炭酸カルシウム
- リン酸水素カルシウム
- ボレイ(牡蠣の殻)など
● 特徴
- 制酸力が強く、胸やけの改善が比較的しっかりしている
- 刺激が弱いため幅広く使われる成分
● 注意点
- 便秘を起こしやすい
- 大量摂取・長期使用で 高カルシウム血症 のリスク
(吐き気・だるさ・食欲低下などに注意)
▼まとめ:制酸成分の選び方
- 下痢しやすい → アルミニウム系
- 便秘しやすい → マグネシウム系
- お腹が張りやすい → アルカリ系(重曹)は避ける)
- 胸やけをしっかり抑えたい → カルシウム系も候補に
成分ごとの性質を理解して選ぶと、症状にあった適正な胃薬を選びやすくなります。
3.制酸成分はどのように効くのか?(作用機序)
● 胃酸の中和
過剰な胃酸を化学的に中和し、強すぎる酸を弱める。
● 胃粘膜の保護
粘膜を覆い、炎症や刺激から守る。
● 胃の働きを落ち着かせる
胃酸の刺激が落ち着くことで、胃の不快感が改善しやすくなる。
制酸成分は「荒れた胃を休ませる」イメージに近い働きをします。
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4.どんな症状に向いている?
- 胸やけ
- 胃痛
- 胃もたれ
- 食べすぎによるムカムカ
- 胃酸が上がってくるような感覚
- ストレス性の胃の不快感
市販の胃薬(総合胃腸薬)にも広く含まれています。
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5. 使用時の注意点まとめ
制酸成分は胃の症状改善に役立ちますが、体質・併用薬・持病によって注意が必要です。以下のポイントを必ず確認しましょう。
● 長期連用はしない
制酸成分は「一時的な胃酸過多の改善」を目的としたものであり、
長期間の漫然使用は副作用リスクが高くなる ため避けましょう。
原因(ストレス・暴飲暴食・生活習慣・他の病気)がある場合は、早めの受診が必要です。
● 重い胃痛・黒色便・吐血がある場合はすぐ受診
以下の症状がある場合は、自己判断で胃薬を続けてはいけません。
- 強い胃痛
- 黒色便(タール便)
- 吐血(コーヒー残渣様の吐物を含む)
- 激しい貧血/ふらつき
→ 胃潰瘍・胃出血などの重大な疾患の可能性があるため、速やかに医療機関へ。
腎臓に疾患がある人は「マグネシウム成分」に注意
- 酸化マグネシウム
- 炭酸マグネシウム
- ケイ酸マグネシウム
などの マグネシウム系制酸成分 は、
腎機能が低下していると排泄が遅れ、高マグネシウム血症 のリスクがあります。
→ 腎臓病・透析中の方は、医師・薬剤師への相談が必須。
アルミニウム・マグネシウム・ナトリウムの蓄積に注意(腎臓病・透析患者)
腎機能が低いと以下が体内に蓄積しやすくなります:
- アルミニウム → アルミニウム脳症・アルミニウム骨症のリスク
- マグネシウム → 高マグネシウム血症
- ナトリウム → 浮腫・血圧上昇
→ 必ず医師に相談し、自己判断で服用しないこと。
他の医薬品(風邪薬・解熱鎮痛薬など)と成分重複に注意
制酸成分は胃薬以外にも、
- 風邪薬
- 総合胃腸薬
- 解熱鎮痛薬
- サプリメント
などに含まれることがあります。
→ 複数製品を併用すると制酸作用が強くなりすぎたり、電解質異常を起こす可能性 があります。
購入時に成分の重複を必ず確認しましょう。
● アルミニウム/カルシウム成分 → 便秘に注意
- 乾燥水酸化アルミニウムゲル
- 沈降炭酸カルシウム
などは、便を固める作用がある ため、便秘傾向の人は注意。
● マグネシウム成分 → 下痢に注意
- 酸化マグネシウム
- 炭酸マグネシウム
は、便をやわらかくする(緩下作用) があるため、
下痢している時の使用には不向きです。
▼用語チェック(登録販売者試験にも役立つ)
● アルミニウム脳症
アルミニウムが脳に蓄積することで発症。
- 記憶障害
- 思考力低下
- 言語障害
などが現れることがあります(透析患者で特に注意)。
● アルミニウム骨症
アルミニウムが骨に沈着し、骨代謝が阻害される状態。
- 骨痛
- 骨折しやすくなる
- 成長障害などを起こすことがあります。
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チモール
チモールは、タイム(Thyme)というハーブに含まれる植物由来の殺菌成分で、
うがい薬や歯磨き粉、口腔ケア製品などに広く使用されています。
強い香りと清涼感が特徴で、細菌・真菌に対して抗菌作用を示します。
● 細菌・真菌には殺菌効果あり
チモールはフェノール系の成分で、
- 口腔内の細菌
- カビなどの真菌
に対して抗菌作用があり、
口腔内の衛生管理(口臭・歯周病予防)を目的に使われています。
● ウイルスにはほとんど効果がない
誤解されがちですが、
チモールは ウイルスに対する殺菌効果はほぼありません。
植物由来=ウイルスに効く
というイメージがつきやすいのですが、実際にはそうではありません。
風邪やインフルエンザ対策として「うがい薬のチモールがウイルスを殺す」と考えるのは誤解です。
● 感染症予防に使うときの注意点
- 口腔内の菌を減らす目的には有効
- しかしウイルス対策の主役にはならない
- 「天然成分だから安心」「何にでも効く」は間違い
用途の「得意・不得意」を理解して、目的に合わせて選ぶことが大切です。
● まとめ
天然成分=万能ではないため、正しい使い分けが重要
チモールは植物由来の殺菌成分
細菌・真菌に対する抗菌作用がある
ウイルスには効果が乏しい
うがい薬・歯磨き粉などで口腔衛生に使われる
【参考文献】
更新履歴
・2025/11/22:加筆、参考文献リンク追加
・2025/08/05:初版公開



