2025.10.15 2025.11.02

登録販売者試験＃53 加味逍遙散

yamadap1984@

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「加味逍遙散」―気の巡りを整えて、心と体のアンバランスを調える処方

◆ 加味逍遙散とは

「イライラする・不安で落ち着かない・眠れない・顔がほてる」――
そんな症状に用いられる代表的な漢方薬です。
現代的にはPMS（月経前症候群）や更年期障害の精神的・自律神経的な不調にも広く使われています。

漢方の考えでは、これらの症状は「気・血・水」のうち**気（き）の巡りが滞った状態＝気滞（きたい）**が関係しており、（気は気でも）血に乗った気の巡りが悪くなっているため冷えを併発した気帯となる。
加味逍遙散はこの“気”を巡らせ、心身のバランスを整える処方とされています。

添付文書上の効能効果：体力中等度以下で、のぼせ感があり、肩がこり、疲れやすく、精神不安やいらだちなどの精神神経症状、ときに便秘の傾向のあるものの次の諸症：冷え症、虚弱体質、月経不順、月経困難、更年期障害、血の道症（※）、不眠症
（※）血の道症とは、月経、妊娠、出産、産後、更年期など女性のホルモンの変動に伴って現れる精神不安やいらだちなどの精神神経症状および身体症状のことである。

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◆ 処方構成と働き

生薬名	主な作用	解説
柴胡（さいこ）	気の流れを整える	イライラ・情緒不安定を緩和
当帰（とうき）	血を補い巡らせる	月経不順・冷え・のぼせに
芍薬（しゃくやく）	緊張をゆるめる	生理痛・肩こりにも効果
茯苓（ぶくりょう）	水の巡りを整える	むくみ・不眠を改善
甘草（かんぞう）	全体を調和させる	他の生薬の働きを助ける
薄荷（はっか）	気を発散し頭をすっきりさせる	気分の沈み・頭重に
生姜（しょうきょう）	体を温め胃腸を守る	消化機能をサポート
山梔子（さんしし）	熱を冷ましイライラを鎮める	顔のほてり・のぼせに
牡丹皮（ぼたんぴ）	血の滞りを取り除く	月経痛や精神的不安を緩和

※「逍遙（しょうよう）」とは「自由に歩き回る」という意味。
加味逍遙散は、まさに「滞った気を巡らせ、心を自由にする」薬です。

◆ 適応と特徴

月経前症候群（PMS）のイライラや情緒不安
更年期の不眠・不安感・ほてり
ストレスによる気分のアップダウン
頭痛・肩こり・のぼせ・便秘傾向

→ 精神的ストレスからくる身体症状に幅広く対応します。

☆PMS：月経前症候群：生理の3－10日前あたりから起こり始める。身体的や精神的な症状だけでなく自律神経に伴う様々な症状が人によって違う部分が強くでるため、人により重症度の違いが出る。
生理が始まると嘘みたいに症状が無くなる。という特徴がある。

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◆ 西洋医学的な視点から

近年の研究では、自律神経バランスの調整・ストレス緩和・ホルモンバランスの安定などの作用が報告されています。
PMSや更年期障害でよく見られる「セロトニンやエストロゲンの変動」にも穏やかに働きかけると考えられています。

◆ 加味逍遙散を高める生活セルフケア

深呼吸を意識し、吐く息を長くする（自律神経の安定）
軽いストレッチやウォーキングで気の流れを促す
アロマ・入浴・音楽などでリラックスを心がける
セロリ・春菊・バジル・ミカン・玉ねぎなど「香りのある食材」を積極的に摂る

→ 香り（揮発性成分）は“気”を動かす効果があり、加味逍遙散との相性が良いです。

◆ 注意すべき体質・併用薬

・体が極端に冷えている人や虚弱が強い人には不向き。
・胃腸が弱く下痢しやすい人は、用量を減らすか他処方と併用を検討。
・抗うつ薬や抗不安薬との併用は、医師または薬剤師に相談する。
・妊娠中の使用は避ける（牡丹皮や山梔子に子宮収縮の恐れあり）。

◆ 加味逍遙散の使い分け

症状タイプ	処方例	ポイント
気分のアップダウン・イライラ	加味逍遙散	気を巡らせ心身を安定させる
のぼせ・発汗・動悸	温経湯	陰虚や血虚が強い場合
倦怠感・食欲低下・冷え	補中益気湯	体力低下・気虚体質向け
抑うつ傾向が強い	柴胡加竜骨牡蛎湯	精神的緊張・不眠を伴う場合