登録販売者試験 #41 芍薬甘草湯
芍薬甘草湯 — 基本情報と適応
1. 定義と処方構成
- 芍薬+甘草の2味構成
芍薬甘草湯は、筋肉のけいれんやこむら返り(足がつる)に使われる漢方薬です。筋肉がけいれんして痛む時に、急激な緊張を和らげて痛みを抑えてくれる特徴があります。特に夜間の足のつりや、生理痛、腰痛などに幅広く用いられています。
「68番」としてツムラやクラシエ等からエキス顆粒が市販されており、第二類医薬品に分類されます。
2. 適応症・効能
効能・効果
• 足のつり、腰痛
• 筋肉がけいれんして痛む症状
• 急な生理痛
体力に関わらず使用でき、筋肉の急激なけいれんを伴う痛みのあるものの次の諸症:こむらがえり、筋肉のけいれん、腹痛、腰痛

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3. 中医学的病機論と証(肝陰不足・血行不暢など)
傷寒論
• 所属分類:和解剤 – 調和肝脾剤
• 効能:酸甘化陰(芍薬の酸味と甘草の甘味で陰液を補い)、緩急止痛(急なけいれん・痛みを鎮める)
• 病因病機:肝陰不足 → 筋脈挛急(筋肉がこわばり、急激に痛みを起こす)
• 治法:柔肝緩急
作用機序(中医学的解釈)
中医学的には「陰血不足」「血行不暢」による脚のけいれんや腹中の痛みに用いられます。とくに 肝陰不足によって筋脈がひきつる 病態に適しており、「柔肝緩急法」で治す方剤とされています。
【補足】
中医学では、血が不足する(血虚)、あるいは血の流れが悪くなる(瘀血・血行不暢)と、筋肉へ十分な栄養が運ばれなくなります。その結果、筋肉が柔らかさを失い、スムーズに動きにくくなります。イメージとしては、おもちゃの電池が切れかけて動きがカクカクする状態にたとえると分かりやすいでしょう。
筋がうまく養われないと、突然キュッと強く収縮するような“変な縮み方”を起こしやすく、これがいわゆるつり・痙攣につながります。
また、血流の流れが悪くなってどこかで滞ると、そこで痛みが生じます。中医学ではこれを
「不通則痛(通らなければ痛む)」
と説明します。
ここでは、
「中医学には、筋肉の緊張をゆるめるための理論として柔肝緩急という考え方がある」
と理解していただければ十分です。
中医学にはこれに関連する治法として、「柔肝緩急法(じゅうかんかんきゅうほう)」があります。
中医の理論では、「肝は筋を主る」とされ、肝の働きが筋の柔軟さや伸び縮みに影響すると考えます。血が不足したり筋が硬くなっているときに“柔肝”を行うことで、筋肉の緊張をゆるめ、つり・拘急を和らげるという考えです。
4. 西洋医学/現代薬理から見た作用機序
- 筋肉細胞での Ca²⁺ 流入抑制 + K⁺ 流出促進 → 過剰収縮の抑制 :筋収縮の仕組み(看護roo)
- プロスタグランジン産生抑制や神経伝達抑制による鎮痛作用 :プロスタグランジン(日薬理誌)
5. 臨床エビデンス/研究データ
芍薬甘草湯は、筋けいれん・こむら返りに対して有効性を示した臨床研究が複数報告されています(日本東洋医学会誌、PubMed)。
一方で、必ずしも全例に効果があるわけではなく、無効例も報告されています(Primary Care レビュー、症例報告)。
そのため「原因が筋の過緊張でない場合」「電解質異常や脱水など別の要因がある場合」には効果が乏しいケースもあります。
6. 安全性・禁忌・注意点
偽アルドステロン症のリスク(長期・大量服用、カリウム低下、高血圧・腎疾患・心疾患がある場合など)
- 用法用量(例:医療用では成人 1日 7.5g を 2–3回)及び連用期間の目安
- 妊婦・授乳婦、虚寒証(冷えが強い人)などへの注意
- 有効例が読んでいて面白いので、目が行きがちですが。無効例もあるため完全に頼り切るのもよくありません。患者の体質や効果聞き取りを進めて継続するか考えてください。
注意点
• 甘草が多く含まれるため、低カリウム血症を起こすことがあります。心疾患の方は服用できません。高血圧・腎臓病の方も必ず医師・薬剤師に相談しましょう。
• 妊娠中体力に摂取すると、早産の恐れあり。
• 芍薬甘草湯は、乾燥や血不足が原因で筋がつるタイプ(虚熱証)に向きます。一方で、冷えが主な原因のつり(虚寒証)では、温める作用がないため効果が出にくいことがあります。
• 用法用量を守り、長期連用は避けることが大切です。
7. まとめ — 向いている人/注意すべき人
日常での活用シーン
• 湿布薬売場で:足のつりや腰痛がつらい方に。
• 女性薬売場で:急な生理時の腹痛や腰痛でつらい方に。
- 突発的な筋けいれんやつりに対して、短期・頓服で使いたい人
- 定期的な長期連用・高齢者・持病のある人は医師・薬剤師への相談を推奨
まとめ
芍薬甘草湯は、筋肉のけいれんや生理痛、腰痛などに即効性を持つ代表的な漢方薬です。中医学的には「肝陰不足による筋脈挛急」を目標とし、酸甘の組み合わせで急な痛みを和らげます。ただし体質や証を見極め、冷えが強い人や持病のある人は注意が必要です。
【参考文献】
- 初稿:2025年9月13日
- 改訂:2025年12月2日

